水谷社長がゲストをお迎えして対談します。
4回目のゲストは静岡銀行 大井町支店の支店長 岩﨑隆行様です。
ダイバーシティへの様々な取組やテクノロジーの進歩に伴う業務の変化について語り合いました。
- Guest
- 静岡銀行 大井町支店
支店長
岩﨑 隆行様(取材当時) - Host
- 大成温調株式会社
代表取締役社⻑執⾏役員
水谷 憲一
人材のダイバーシティに取り組んでいます
岩﨑様(以下、岩﨑)最近、よくダイバーシティといいますが、性別や年齢、国籍など、人材の多様性を意識していますか?
水谷社長(以下、水谷) 人手不足で必要性に迫られてという部分もありますが、かつて理系出身の男性中心だったのが、文系出身者の採用が増えたり、女性も技術職採用されています。それから、外国人にも採用の窓口を広げています。
岩﨑 業務には資格が必要になってきますが、学生時代に、その分野に馴染みのなかった方にも、すっと入っていけるものなんですか?
水谷 資格にもよりますが、一定の要件を満たせばすべての方に取得いただけます。転職してきた方もいますし、国家資格を取得した外国人従業員もいますから、やる気次第だと思います。逆に、日本人の理系出身者でも、なかなか資格を取れないケースもあります。
岩﨑 当行は、いろんな業界から中途採用をしたり、中国、韓国を中心に、少しずつ外国籍の方の入行が増えてきています。それから、女性の登用が叫ばれていますし、女性の管理職への引き上げにも力を入れています。そういった面では、いろいろなところでダイバーシティに取り組んでいます。
水谷 いま、女性の管理職の方は在籍していますか?確か、女性の取締役の方がいらっしゃいましたよね。
岩﨑 社外取締役ですね。まだ、生え抜きの女性役員はいないので、今後、そういう方を輩出しよう、というなかで、女性管理職は出てきています。
水谷 うちも早くそうなったらいいなと思っておりますが、少し時間がかかりそうです。外国人の採用もあるというお話ですが、日本で教育を受けた方ですか?
岩﨑 日本の大学を出られた方がほとんどです。日本語にも不自由ありませんので、いまのところは主に静岡県内ですけど、支店勤務など、いろんな部署で活躍しています。御社の外国人従業員の国籍は多岐にわたるのですか?
水谷 中国、ベトナム、カンボジアなどアジア方面ですね。日本で教育を受けた人のほか、母国の学校からも採用しています。「将来は国で独立したい」という声もあり、暖簾分けを考えています。
技術面とヒューマンスキルの両輪が必要
岩﨑 人材育成で特徴的な取り組みはありますか?
水谷 他社と比較はできませんが、数年前から研修の体系を変えました。いままでは基礎教育がメインでしたが、基礎教育に加え、年次ごとに用意していた教育を自由に履修できるようにしました。社内に学校をつくるイメージで、社員それぞれのニーズに合うようなものを用意しています。それから、これまで技術研修ばかりで、ビジネススキルの研修は新入社員研修にて少し学ぶだけでしたので、さらに応用的なビジネススキルの教育に取り組みはじめました。
岩﨑 どうしても、技術面が最優先になりますよね。
水谷 もちろん技術面は重要ではありますが、やはり、専門知識だけ蓄積してもビジネスはできませんから。両輪で、ヒューマンスキル、対人スキルも必要になります。どちらかに偏ってもいけないので、当社に必要なスキルを明確にしたうえで、いま、ひとりひとりのスキルの見える化のイメージで、レーダーチャートのようにして、どこを伸ばすか検討する試みを始めたところです。御行は、どんな教育体系を敷いていますか。
岩﨑 年次ごとの集合研修や、業務ごとの研修など、ステージに応じて、それぞれ研修が組まれています。東京から大阪まで支店があり、静岡の本部で行う研修だけでなく、テレビ会議システムを活用した研修も実施しています。業務知識に関する研修や、先ほどおっしゃったヒューマンスキルの研修もあります。
水谷 プログラムは年々、変えていますか。
岩﨑 はい。そのときどきに必要なスキルを考えて研修体系を各業務部門で組み、人事が取りまとめてオープンにする形です。
テクノロジーの進歩で変わる業務内容
岩﨑 AIの導入で、若い行員が勉強しなくてはいけないことがだいぶ変わりつつあります。昔のような単純業務が不要になる代わりに、いきなりレベルの高いソリューション営業をこなすスキルを求められるようになっています。そのため、即戦力として必要なスキルを与えることに力点を置いています。かつては先輩から頼まれた単純作業をやりながら仕事を覚えていき、実際にお客様と話す際に活用していましたが、いまはそれらを全てコンピューターがやってくれますので、若い子が基礎的な部分を学ぶ機会がなくなってしまっています。
水谷 だいぶ置き換わっているんですね。
岩﨑 財務分析も、僕が入行した30年近く前は、自分たちで鉛筆舐めて計算機を叩きながらやっていましたが、最近は、もらってきたデータを機械で通すとやってくれます。
水谷 いきなりそのレベルの仕事をするということは、それに合ったトレーニングをしていく必要がありますね。
岩﨑 今の子が仕事ができないのではなく、求められるレベルが高くなっているんです。
水谷 当社はまだそこまではいかないですね。RPAやAIの情報を集めて、事務作業的なものは置き換え可能かと考えていますが、現場のプロジェクト管理はそうもいかないことがあります。
岩﨑 施工管理は、機械化も進んでますよね。
水谷 さすがにAIは少し先かもしれないですけど、iPadや3Dスキャナーなどのツールを使って効率化は進めています。ただ、それによって、逆に別の作業が増えてしまっては本末転倒なので、高度な部分で付加価値を求めて、作業的な部分はどんどん効率化して、ひとりひとりが楽にならないといけないですよね。
すべてのことを「自分ごと」として考えて行動
岩﨑 最近の若い社員はどんな感じですか?
水谷 お金やキャリアより、どれだけ自分の時間をもてるかを重視する人が多い気がします。だからこそ、研修は就業時間内に組むなど、人事も配慮しています。そちらはいかがですか?
岩﨑 こちらも同じです。資格取得のための勉強を休日にすると時間外労働に該当するため、強制はしていません。あと気になっているのが、いまは、自分で足を使って調べたり、お客様のところに行かずに安直にネットで調べて、検証もせずに答えを出す人が増えています。
水谷 とりあえず一次情報は出てきますからね。
岩﨑 よく、本部で研修の最後に「質問ある?」と言うと、「成功事例は?」「失敗事例は?」など、答えをすぐそこで求める若手社員がいます。さらに、もらった答えに当てはまることしかやらない。それが、僕なりに感じている若い子の傾向です。ですから、「自分でしっかり考えて経験して答えを出さないといけないんだよ」と、よく話しています。自分でも心がけていることなんです。
水谷 頭脳をネットでアウトソーシングしているかたちになっちゃうんですかね。でも、基本的に仕事のひとつひとつに正解ってないじゃないですか。
岩﨑 お客様によっても違うなど、いろんな答えがあってしかるべきです。
水谷 ネットでいろんな情報を集めたり、人から聞いたことでも、最終的に自分の頭で判断しなくてはいけませんよね。
岩﨑 そうですね。ネットで情報を集めること自体は否定しません。いろんな情報が集まってくる中で、何が正しい、何が間違っているか、そこをしっかり判断していく必要があります。
水谷 当社では、とにかく明るく元気な人を採用したいと思っていますが、どんな若い人に応募してほしいですか。
岩﨑 「自分は自分、他人は他人」ではなく、すべてのことを「自分ごと」として考えて行動できる人です。そういったことが、お客様のために行動できることにつながります。職場では、部署や係ごとのセクショナリズムで、「向こうのことは知らない」となりがちですが、「全部を自分ごととして考えなさいよ」と、指導しています。また、大きな組織では、セクショナリズムや忖度が働いて、物事が前に進みづらくなる傾向がありますが、御社の担当者は、話すとすぐに返答があります。全社的な意思決定が迅速に行われているんですよね。仲がいいというか風通しがいい印象で、うらやましいです。
水谷 ありがとうございます。支店ごとにカルチャーが異なっていたり、本社では違うフロアの社員とは顔を合わせる機会があまりない等、様々な課題があるので、今よりももっと風通しをよくしていきたいと考えています。